BACK NUMBER「人生の扉」振り返り

血液内科医の学術対談プログラム「人生の扉」:小松則夫からのメッセージ(Vol. 1)

小松則夫 写真

~第1回から第5回を振り返って~

日本の血液内科学の研究と臨床を牽引する教授陣との対談を通じ、貴重な苦労話や成功へのターニングポイント、すなわち「人生の扉」を知ることで、今後の血液内科学のあり方を考えるとともに、未来ある後進への応援メッセージとして本対談プログラムをお届けしています。本プログラムは、本年2022年2月にスタートし、これまで5人の先生方にご登場いただきました。その中で、数々の心に残るお話を頂戴しましたので、その内容の一部をご紹介したいと思います。まだ動画をご覧になっていない先生方にも、ぜひご視聴いただければ幸甚です。本プログラムは、今後もトップリーダーの先生方を順次お迎えして、「人生の扉」を皆さんにお届けしてまいります。どうぞご期待ください。

  • 第1回 2022年2月赤司浩一教授(九州大学医学部 病態修復内科(第一内科))

    赤司先生の研修医時代の症例報告を書く習慣が、その後の研究や臨床の大きな礎となっていると感じました。留学先は、Cell論文を出すことを目標にスタンフォード大学に決定されたとのこと、そしてボスから学んだ”Impossible is Nothing”の精神がその後の赤司先生の研究者魂に拍車をかけたのだと感じました。その後のハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所でのラボ運営やグラント申請から大型研究費獲得は、日本人としてはなかなか成しえない輝かしい実績です。リーダーシップについては、米国時代の著名な教授陣との議論から学んだとお話しされました。圧倒的な研究業績のなかで、その中心となる造血幹細胞の分化機構解明と、最近の研究として白血病細胞特異抗原TIM-3の同定、さらに治療法開発への取り組みについても詳しくお話しいただきました。本対談を通じて、若い先生方が大いに刺激され、赤司先生をご存知の多くの先生方も赤司先生の知られざる側面をご覧いただけると確信します。

  • 第2回 2022年3月松村到教授(近畿大学医学部 血液・膠原病内科)

    日本血液学会理事長、近畿大学医学部長・血液内科主任教授として、ご多忙を極める松村先生のリーダーシップスタイルは、傾聴と誠実さを重んじ、自ら汗をかき、そして「義と理」のバランスにより決断するという実に繊細なものであることを知りました。学生時代に受けた本庶佑先生の授業に感銘して基礎研究へと進んだそうです。なかなか論文を出せない時期もあったそうですが、培った研究技術を駆使して金倉譲先生のラボでは実に数多くの論文を一流科学誌にご発表されました。そして、その原動力は何であったかと問うたところ、間髪入れずに「プライド」と断言されました。ご研究のご紹介では、ライフワークともいえるCML幹細胞駆逐への臨床研究の取り組みについて詳しくお話しいただきました。また、研究のみならず、患者会とのつながりの大切さについても触れられ、先生の優しいお人柄が伝わる対談でした。

  • 第3回 2022年4月高折晃史教授(京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学)

    高折先生が血液内科へ進まれたきっかけは、研修医時代のリンパ腫患者の「血液内科医になってください」という言葉であったそうです。以来、血液内科領域の研究と臨床に精力的に取り組んでこられました。初期のご研究では、内山卓先生との出会いによりATL研究に従事されました。「残りくじの留学」とは仰いましたが、米国グラッドストーン研究所に留学され、当時の「エイズ制圧」の学会発表に感銘されたとのことです。教授就任後、「最高の研究と最良の医療」を目指し、25の関連病院をまとめ臨床研究を立ち上げたリーダーシップは圧巻です。学生には、“Effort and courage are not enough without purpose and direction.” というJohn F. Kennedyの言葉でエールを送っているそうです。ご研究については、ご自身の基礎研究の中心であるAPOBEC3によるゲノム変異と発がん研究への取り組みについて、ご説明いただきました。臨床に結びつく基礎研究の重要さを改めて認識することができた対談でした。

  • 第4回 2022年5月張替秀郎教授(東北大学大学院医学系研究科 血液免疫病学分野)

    張替先生は私と同郷(茨城)のご出身で、冒頭では懐かしいお話もできました。研修医を経て東北大学第二内科に戻られた後、ニューヨークのロックフェラー大学佐々茂先生のラボへ留学され、ヘム蛋白のご研究に従事されました。ニューヨーク生活がなかなか大変であったというエピソードを伺いましたが、佐々先生から研究者に求められる姿勢を学ばれたとのことで、この頃のご研究への取り組みが今の張替先生の研究者としてのバックボーンとなっているのだと感じました。教授として、さらに2021年日本血液学会学術集会の会長としても、堂々としたリーダーシップを発揮されていますが、意外にも「テンパらない」ことを意識されているとのことで、公平な判断を常に心がけておられるとのことです。ご研究の紹介では、長年取り組んでこられた転写因子制御による造血機構の解明、さらに最近成功されたiPS細胞を用いた環状鉄芽球モデル構築についても詳しくお話しいただきました。対談を通じて、自分の仕事を愚直に全力で取り組む張替先生の姿勢に感銘しました。

  • 第5回 2022年6月豊嶋崇徳教授(北海道大学大学院医学研究院 血液内科学教室)

    先生方の医師になった理由は様々でしょうが、豊嶋先生の場合、それは運命づけられていたといえるでしょう。というのも、医師のいない町でお生まれになり、ご姉妹を若くして共に肺炎で亡くされたというお話を伺ったからです。九州大学医学部をご卒業後、希望しなかった病院で研修を受けられましたが、そこには結果的に人生の宝となった院長先生との出会いがありました。ハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所への留学ではGVHDの研究をNature Medicineに発表されています。その後、岡山大学、九州大学を経て北海道大学教授に着任されましたが、リーダーシップの根幹はブレないことだとのことです。基礎医学に裏打ちされた新しい移植法への取り組みに加え、最近では唾液を用いたコロナウイルスPCR検査をいち早く開発し、臨床ニーズに対するスピード感の重要性をご指摘いただきました。20年以上前のGVHD研究、最近のCAR-T細胞療法、新型コロナウイルス研究など様々なご研究を展開されてきましたが、そこには「サイトカインストーム」という共通の病態があることに気づかされました。対談では様々な豊嶋先生の「人生の扉」を伺うことができ、先生の飾らないトークに魅了されました。