造血プロセスと骨髄増殖性腫瘍

骨髄増殖性腫瘍(MPN)の一つである真性多血症(PV)は主に赤血球が過剰産生される疾患で、骨髄造血に関与するJAK2変異が高頻度に認められます。

CML[chronic myeloid leukemia]:慢性骨髄性白血病、ET[essential thrombocythemia]:本態性血小板血症、JAK2[Janus kinase 2]:ヤヌスキナーゼ2、MPN[myeloproliferative neoplasm]:骨髄増殖性腫瘍、PMF[primary myelofibrosis]:原発性骨髄線維症、PV[polycythemia vera]:真性多血症

Boissinot M, et al. Cancers (Basel). 2014; 6(3): 1631-1669. より改変


MPNの病態:サイトカインシグナル伝達経路の異常

MPN細胞では、JAK2、MPL、CALR変異によるシグナル伝達経路の恒常的な活性化を認めます。

MPNにおけるサイトカインシグナル伝達経路の異常

正常な細胞では、エリスロポエチン(EPO)やトロンボポエチン(TPO)が、EPO受容体EPORやTPO受容体MPLに結合し、受容体の細胞内ドメインに結合したチロシンキナーゼJAK2を介してシグナル伝達される。このため、サイトカインの量的変動により下流シグナルの調節が可能であるが、MPN細胞では、JAK2、MPL、あるいはCALR変異遺伝子産物が、受容体を恒常的に活性化するため、細胞が腫瘍化する。

荒木 真理人, 他:臨床血液2016;57:2526-2534.